学者町長 山田力蔵と山田力蔵文庫

平成18年の図書館まつりで展示されていた山田文庫。見るからに貴重そうな本が並んでいましたが、これはどういう経緯で図書館の蔵書となったのでしょうか。


山田力蔵文庫、通称山田文庫は昭和46年(1971年)に山田力蔵氏の蔵書を、ご子息の山田治夫氏から市立図書館に寄贈していただいたものです。
山田力蔵は明治34年(1901年)所沢市所沢に生まれました。早稲田大学を卒業し、所沢実業校(現在の所沢高校)で英語教師として採用されました。その後、「やまだ呉服店」を経営しながら、戦後は町長に就任。温厚篤実な学者町長として町民から慕われていました。その後も所沢市教育委員長、所沢商工会議所会頭を歴任。昭和38年(1963年)62歳でその生涯を終えるまで、市勢の振興に力を注ぎました。
寄贈された図書は2,230冊。これはトラック2台分に相当します。当時の日刊新民報の記事によると、当時の価格で140万円相当の価値があったそうです。
すべての図書について、現在の簡易な製本がほどこされた本と違い、重々しい風格が感じられます。


山田文庫の一部


図書のジャンルも多岐にわたっています。哲学書や経済書、文学全集など幅広く収集されていて、中でも吉田松陰に関する図書は63冊あります。
郷土資料では「武蔵夜話」や三ヶ島葭子の作品集など、貴重な書物がそろっています。
寄贈図書には和書だけでなく洋書も数多く含まれています。特に英米文学が多く、高校で教鞭をとり、普段から洋書に親しんでいた力蔵の人柄がうかがえます。
現在は、図書の劣化が激しく、大半が書庫で保管されている山田文庫ですが、市民の皆様には毎年開催される図書館まつりにおいて、その一部をご覧いただいています。(F)


山田文庫蔵書の一部

  • 『お伽草子』太宰治 筑摩書房S20
  • 『人生劇場 青春篇』尾崎士郎 新潮社S14
  • 『多甚古村』井伏鱒二 河出書房S18
  • 『墨東綺譚』永井荷風 岩波書店S12
  • 『麦と兵隊』火野葦平 改造社S13
  • 『冥途』内田百間 三笠書房 S9
  • 『猫と庄造とふたりのをんな』谷崎潤一郎 創元社S15

参考文献

  • 『所沢市立図書館関係記事資料』所沢市立所沢図書館《K016ト》
  • 『所澤人物名鑑』埼玉公論社《K282ト》
  • 『埼玉名士録 昭和36年度版』埼玉新聞社《K280.3サ》

「所沢の足跡」地図

所沢高校
「所沢の足跡」地図上の〇 所沢実業校(現在の所沢高校)