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手打ちうどんはごちそうか?

所沢に住む人なら必ずといっていいほど、冠婚葬祭で「うどん」を食べたことがあるはずです。 地方によっては粗末な食べ物とされている「うどん」が、どうして所沢ではごちそうなのでしょうか。

所沢は昔から水に恵まれておらず、水田で米を作ることが困難でした。その代わり、サツマイモや麦が多く作られていました。この麦を使った手打ちうどんがこの地域ではなによりのごちそうでした。 うどんは、普段の食事ではないハレの食事、つまり儀礼食としてよく食べられていました。 昔の農村地域では、お盆など物日と呼ばれる日にうどんを食べていたようです。

昔は今と違って、結婚式もお葬式もみんな自宅で開かれました。大勢のお客様の料理を地域の人が協力しあって宴席の準備をしていました。 うどんを打つのは主に男性の仕事でした。うどんを打てない婿は恥ずかしいとのことで、男性は17,8歳になると近所のお葬式などでうどんの打ち方を教わったそうです。生地をしっかりと踏みしめて作るうどんは、踏めば踏むほどコシが出ます。うどん作りには力が必要です。おいしいうどんを打てることは一人前の男性のあかしでもありました。

昭和初期には、うどんに適した小麦の品種が積極的に開発されていました。「埼玉27号」などの品種は粘りが強く、うどんには最適です。 食べ方は、つけ麺が主です。水にさらしたうどんを、鰹節のダシがきいた醤油味のシタジにつけていただきます。冬場は煮込みうどんも食べられていたようです。 所沢には現在もおいしい手打ちうどんのお店がたくさんあります。コシが強く、のど越しがつるんとした所沢のうどんをぜひ味わってみてください。(F)


参考文献

  • 『所沢市史 民俗』 所沢市《213.4ト》
  • 『ところざわ歴史物語』所沢市《213.4ト》
  • 『武蔵野の落ち葉は生きている』いるま野農業協同組合/編 家の光協会《613.136ム》
  • 『いまに伝える農家のモノ・人の生活館』 大舘勝治・宮本八惠子/著 柏書房《K380.3オ》
  • 『聞き書 埼玉の食事』農山漁村文化協会《383.8ニ》