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松永安左衛門と柳瀬荘・黄林閣

国指定重要文化財「黄林閣(おうりんかく)」は、実業家・松永安左衛門の別荘であった柳瀬荘の構内にあります。

電力の鬼と呼ばれた松永安左衛門は、明治8年に長崎県壱岐に生まれました。明治32年に慶応義塾を中退しましたが、福沢諭吉との出会いが彼のその後の人生に大きく影響します。 明治42年に諭吉の養子・福沢桃助とともに福博電気鉄道を設立。電気事業に着手します。その後、九州電灯鉄道、東邦電力の経営者として活躍しました。

戦時中に電力国家管理の動きに抵抗して敗れ、国策会社日本発送電の発足とともに引退生活に入りました。そして、柳瀬山荘に籠もり、自らを「耳庵(じあん)」と号して茶道三昧の日々を過ごすことになります。 一度は隠居した安左衛門でしたが、昭和24年に電気事業再編審議会会長として、再び第一線に復帰します。そして、政府、財界、官僚の反対の中、日本発送電の分割民営化を敢行し、電力会社の経営基盤の確立に力を注ぎました。

昭和46年に97歳で波乱の人生を終えた安左衛門は、平林寺(新座市野火止)の墓所で静かに眠っています。

安左衛門が不遇の時期を茶人として過ごした柳瀬荘。そのうち黄林閣と長屋門は、東久留米市柳窪の村野家の建物を昭和5年に現在の地に移築したものです。 柳窪の名主であった村野家は代官や役人を接待する機会も多く、そのための部屋もしつらえてあります。安左衛門はこの屋敷で客人を手厚くもてなしました。 昭和23年に東京国立博物館に寄贈された柳瀬荘は週に一度、外観のみ公開されています。(F)


柳瀬荘
《所在地》所沢市坂之下437
《交通》所沢駅より志木駅南口行バスで25分「西側」下車で徒歩3分
《公開日》毎週木曜日10:00-16:00(4月-9月)10:00-15:00(10月-3月)
《問い合わせ》東京国立博物館 資産活用課℡03-3822-1114(直通)


参考文献

  • 『所沢市史 文化財・植物』 所沢市《213.4ト》
  • 『私の履歴書 昭和の経営者群像9』 日本経済新聞社 《335.028ワ》
  • 「松永安左衛門氏と柳瀬荘」 『埼玉史談18巻3号』《K005サ》
  • 『世界伝記大事典《日本・朝鮮・中国編》5』 ほるぷ出版《K280.3サ》

「所沢の足跡」地図

柳瀬荘
「所沢の足跡」地図上の〇 柳瀬荘