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所沢の「宙水(ちゅうすい)」

「所沢の井戸は深い」「嫁をやるなら所沢にやるな」といわれてきた所沢。 昔の三富地区では、風呂に入らず、カヤで体をこすってすませたこともあるそうです。 このように水には苦労してきたイメージがあるのですが、あまり深く掘らなくても地下水が湧いてきた地域もあったようです。

宙水とは別名を中水(ちゅうみず)といい、連続した地下水面の上方にはなれて、局部的な不透水層(難透水層)の上にたまった 下水のレンズのことです。つまり、本来ある地下水よりも地表面に近いところに存在する地下水ということです。

これに対し、一般の帯水層中の地下水を本水(ほんみず)といいます。 本水と呼ばれる本来の地下水は地表面から20~30mほどの位置にあり、井戸を掘るにはこれだけ深く掘る必要があります。 しかし、宙水域では5~10m程度掘り進めれば水が湧いてきたといいます。 この宙水は関東ローム層の赤土が大きく影響しており、市内では主に柳瀬川・東川沿いに点在しています。 また、昔の集落は深井戸を掘らずにすむ宙水を中心に発展していったようです。

旧・所澤町(現在の旧町地区)も宙水を中心として発展してきた町のひとつです。 しかし、次第に人口が増え、宙水だけでは町民の水が賄えなくなってしまいました。 そこで、本水も利用するようになり、所沢は深井戸の代表地となってしまいました。 この苦労は昭和10年に町営水道が敷設されるまで続いたようです。

"弘法の三ツ井戸"は所沢伝わる有名な伝説のひとつです。 水に苦労していた所沢を訪れた旅の僧(弘法大師)が水の出る場所を指し示したといわれるこの伝説は、もしかすると宙水と関係があるのかもしれません。(F)


参考文献

  • 『所沢市史 地誌』 所沢市《213.4ト》
  • 『所沢市史 民俗』 所沢市《213.4ト》
  • 『東京の自然史』貝塚爽平/著 紀伊国屋書店  《K454カ》
  • 『新版 地学事典』 平凡社《R450.33チ》

「所沢の足跡」地図

弘法の三ツ井戸
「所沢の足跡」地図上の〇 弘法の三ツ井戸