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宵闇(よいやみ)にかかる地口(じぐち)行灯(あんどん)

お祭りの夜、境内や参道に色とりどりの行灯(あんどん)がかかっているのを見たことはありませんか?
これは「地口行灯(じぐちあんどん)」というものです。行灯には地口や川柳が書かれています。
それにちなんだ絵が添えられています。
地口とは、「しゃれ」を意味する一種のことばあそびです。
例えば、「案ずるより産むが安し」を「あんずより梅が安し」としたり、「飛んで火に入る夏の虫」を「とんで湯に入る夏の武士」といった具合です。
行灯の絵は、墨で輪郭を描いて手早く色付けした素朴なものです。その独特の筆づかいや色づかいで描かれた絵は、 行灯にろうそくの火が灯ると、華やかでちょっと不思議なお祭りの雰囲気をかもし出してくれます。


この行灯は日常で使うものではないため、とても簡単なつくりです。直方体の木枠の三面に紙を貼り、 底に細木をわたしてろうそくを立てるようになっています。
江戸時代中期には、江戸で地口行灯が流行し、お稲荷さんや神社の祭礼には欠かせないものとなっていたようです。
現在は、東京で地口行灯は下町などにわずかに残るだけです。
けれども、所沢をはじめとする県内各所では今も夏祭りの夜に地口行灯を見ることができます。
市内では、北秋津、有楽町、富岡地区などです。


しかし、時代の流れとともに行灯絵の描き手は減少し、市内ではわずか一人だけとなってしまいました。
北秋津では近年、氏子たちの手によって行灯絵が描かれています。
祭りをいろどる地口行灯の伝統の灯を絶やさぬようにしてゆきたいですね。(F)


参考文献

  • 『所沢市史 民俗』所沢市《213.4 ト》
  • 『北秋津ものがたり』北秋津郷土史の会《213.4 キ》
  • 『富岡公民館40周年記念誌とみおか』所沢市教育委員会《379.2 ト》
  • 『埼玉の祭り・行事』埼玉県教育委員会《K380.5 サ》
  • 『さいたまの職人』埼玉県立民俗文化センター《K750 サ》
  • 『新版ことば遊び辞典』東京堂出版《G807.9 ス》